Scroll Top

No.7 メリハリある評価 悪魔の辞典風:人的資本版

・人事評価は差をつけることが大事となぜか思い込まされている非科学的な行為
・評価に差をつけないよりも、差をつける方が不満が増えるという自己矛盾の行為
・評価に差をつけるために、とんでもない労力・工数・神経を費やす、マネジメントが仕事しているという気分を味わう、1年間の最大のイベント

 うちは評価が中心化してしまっている。評価に差がつけられていない。もっとメリハリのある評価をすべきだ。こういう反省というか、問題意識を聞くことが多い。社員一人ひとりの能力の発揮状況やパフォーマンスをチェックし、振り返ることは確かにとても重要だ。振り返りを通じて、個々人が自身の成長課題を発見したり、よりパフォーマンス発揮するためのヒントを得たり、高業績をあげるための工夫の仕方などについて考察をすることができれば、今年よりも来年、来年よりも再来年と、どんどんと成長していくことに繋がっていく。結果として、組織全体の生産性も毎年成長していくことが見込まれる。

 しかし、果たして“評価”として、何らかの符号をつけて、人と差をつけてしまうことにどのようなメリットがあるのだろうか。S・A・AB・B・BC・C・Dといった7段階評価の制度となっていたとき、例えば、A評価とAB評価の判断は正しいのだろうか。それによって、年収の上がり方に差が生じた時、それは合理的な差であると言い切れるのだろうか。さらにそもそも、差を設けることに何の意味があるのだろうか。AB評価の人は、B評価の人よりも上であると確認することで、留飲を下げるのだろうか。何か誇らしい気持ちになるのだろうか。あの人より、自分は活躍しているのであると、意識させることに本当に意味があるのだろうか。例えば、5000人の会社では、簡単に試算してみても、評価という行為に約1万時間、費やすことになる(被評価者に自己評価を付けさせたり、面談までも含めるとその倍の2万時間は超えるだろう)。しかも、評価という行為は、主には評価者の時間を必要とすることになるため、管理職以上の年収が高い人材、組織において重要な役割を果たす人の1万時間が投じられることになる。しかも規模の大きな枢要な部門の部門長やマネジメントの方がよりその時間を費やすことになる。閑職の管理職は、たいして時間を割かない。どうでしょう。恐ろしくないですか?

更新情報

About

人的資本イノベーション研究所は、「日本の人的資本を世界最高水準へ」を掲げ、その実現に向けてコミットしています。人的資本経営の成功に向けた伴走、人的資本イノベーションに関する講演、書籍等の執筆を数々手掛ける岡本 努が代表を務めます。これからの時代にイノベーションを起こす人的資本マネジメントのことならお任せください。