・自社を揶揄するときに「うちは年功だからさー」と使われる言葉
・実は、日本企業には年功主義のみの会社はほぼ存在していないのに、まことしやかに、日本企業は年功的なのでダメであると言われる不思議な言い回し
・自身の不出来さを、うちは年功だから仕方がないと、口実として使われる便利な言葉
完全なる年功序列型で給与・賞与支給額を決定している会社は、実はそれほど多くはない。評価によって大きな差はつけなくても、昇格タイミングはやはり、人によって差がつくのが通常だ。昇格は、人事評価および仕事の実力、昇格後の活躍可能性などを基準にとして総合的に判断される。また、昇給額や賞与支給額も、完全に年功で決まっているケースもあまり多くはない。完全に年功とは、新卒で入社後に、1年経過したら、全員がまったく同額だけ昇給していくという仕組みである。また、昇格タイミングについても、差がつくことはない。したがって、例えば10年目の社員の年収はまったく同じになる。このような仕組みは果たして良くない仕組みなのだろうか。実はメリットもかなりある。全員が同じ処遇なのだから、個人間で競争する必要がなくなる。実は割と多くの組織において、個人間で競争させるよりも、チームとしてお互いが徹底して助け合う方が、結果として組織としての成果は大きくなることが期待できる。社員どうしが、より高い人事評価を獲得するために競争するメリットがないのである。
ステレオタイプ的になんとなく年功はよくない、うちは年功だからダメだ、と言ってしまっていないか、今一度確認することが有効であろう。そもそも人は、同じ仕事を複数年続けていれば成長もするし、パフォーマンスも高くなる。なので、年次を経た人が少し高い報酬ももらうというのは、それほどおかしい仕組みではない。
さらに、実は年功ではなく、年功だと表現して、自社の人材マネジメントを間違って解釈して、その間違った解釈に基づいて批判的なコメントをしてしまっているようなケースも少なくない。実際、社内における、評価や処遇にまつわる会話は生産的でないことが多い。ちょっと振り返ってみるのもたまには良いものである。