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No.11 適正人件費 悪魔の辞典風:人的資本版

・意思のない経営者が欲しがる幻の概念
・正解があるはずだと信じられている不思議なコスト

「適正人件費が知りたいです」という質問をいただくことも少なくない。その気持ちは非常に理解できる。とある役員からはコストを減らせ、特に固定費に近い人件費を減らすべきだと言われる。また同時に、別の役員からは、人員不足なので採用を加速せよという要望が来ることもあるかもしれない。さらにまた別の役員は生産性をもっと高めるべきだと主張することもあるだろう。人事としては、「いったい我が社として、どの程度の人員、人件費にコントロールすべきなのだろうか!?」という問いに悩んでしまうのも非常に理解できる。

 人事としては、簡単にはいわゆる「人減らし」はしたくない。希望退職など、一応は合法的な方法はあるとしても、退職を募るという行為は何とも後味が悪い気もしてしまう。そこで生じるのが、果たして我が社の人件費の“適正”規模とは?という問いである。

 しかし、残念ながら企業にとって一意に決まる“適正”な人件費というものは実は存在しないことを理解しておく必要がある。では、何があるのか!?それは、人件費や人員、あるいは生産性として、目標とする値である。目標値があるのに、なぜ適正値はないのか?それは、人件費は、経営として現在および将来をどう捉え、考察し、将来に向けてどうしたいかといった経営の意思(例えば、成長に対するこだわり、回避するリスク、取るリスク、将来への投資への覚悟、現状の人員構成に対する問題意識、生産性向上へのこだわり)によって決まるものだからである。もちろん、損益分岐点、売上や利益に占める人件費の割合等、財務的に押さえておくべきポイントはある。しかし、最終的には、他社のベンチマークでもなく、論理的な分析結果でもなく、経営として何を優先し、何を劣後させるかの考え方、もっと言えば覚悟によって決まるのである。そういった重要な経営上の意思決定をするために、日常からすべきことは多い。人事は、経営チームとしてきちんとした覚悟を持った判断をサポートできるように、「材料をそろえていくこと」、ここに全精力を投入することを考えみていただきたい。

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About

人的資本イノベーション研究所は、「日本の人的資本を世界最高水準へ」を掲げ、その実現に向けてコミットしています。人的資本経営の成功に向けた伴走、人的資本イノベーションに関する講演、書籍等の執筆を数々手掛ける岡本 努が代表を務めます。これからの時代にイノベーションを起こす人的資本マネジメントのことならお任せください。