・見せかけだけで終わりかねない施策
・20代メンバーは心がざわつく、不信感が増幅しかねない施策
・外見上のアピールをとりあえず急いでしまい、本質的な人件費への投資は先送り
「初任給〇%アップ!」「初任給〇万円実現!」というアピールが行われ、学生の応募数が増える。就職人気ランキングで上位になる。メディアで取り上げられ、注目を浴びる。まぁ、悪くはない話だ。
しかし、仮に30万円の初任給を35万円にアップした場合、1年前、2年前に入社した社員の月給はどうなるのだろう。まさか、新卒入社の方が給料が高いというわけにはいかないから、35万円に到達していない社員の給与を、少なくとも35万円にすることは考えるであろう。しかし、果たして同一金額であればよいのだろうか。さらに、もともと、新卒社員30万円と36万円というふうに、6万円の差があったものが、35万円と36万円になってしまうのだが、差が1万円に縮まってしまってもよいのだろうか。この難しい悩みにきちんと向き合うことなく、拙速に初任給を“とりあえず”“急いで”増額してしまったというケースが非常に増えてしまっている。従来の差をそのまま維持するのであれば、全社員、初任給増額分の5万円を引き上げればよい、ということになるが、まさかそこまでする財務的な余裕がある企業は多くはないであろう。また、パフォーマンスや能力なども考えれば、全社員を引き上げる必要もない。
では、どうやって個々の社員の引上げ金額を決めればよいのか。それは、個々の社員にいくらの給料を、何を根拠に支払うのか。また差をどのように設けるのか。この根本的な問いに答えることにほかならい。難しいが、本質的な問いに答えることから目を背けてはいけない。
「とりあえず、急いでいるので、一旦、まずは初任給を引き上げた。」このせいで、現有メンバーがないがしろにされた気持ちになり、モチベーションを下げてしまうばかりか、退職を促してしまうことにもなりかねない。給与の責任者はこのことをしっかりと肝に銘じておく必要があろう。