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No.2 多様性 悪魔の辞典風:人的資本版  

・あると困惑してなくそうとし、ないと必死に追い求めようとする(ないものねだり)
・覚悟もしていないのに、とりあえずカッコだけ整えようとする典型的なテーマ
・実は多様でない方が、生存本能的に安心するのに、多様性がない状態が続くと滅びる

 

 DE&Iの取り組みとして、こんな施策を実行しています、なぜなら多様性を実現することが会社の成長のためにとても大事ですから、というお話を聞くことが増えた。果たして本当にそうなのだろうか。多様性をマネジメントする難しさに対して覚悟できているのだろうか、それを受け入れる度量は十分なのだろうか。多様性を実現して、何を得ようとしているのか?こう問い詰めたくなるが、実はそれはとても難しい。なぜなら、多様な人材や多様な価値観、多様な発想、多様な方法に触れて、その複雑さや衝突自体を楽しみ、その結果として、それまで見たことがないような、味わったことないようなアウトプットを生み出せた時の快感は味わってみないとわからないから。

 一方で多様な状況というのは、それを組織として構築するのが大変なばかりか、多様性を実現すると、マネジメントも、仕事をするのも短期的には難しくなることが多い。意見をすり合わせたり、合意したりするのに、時間も要する。それはそうだろう、AとB、どっちがよい?という質問に対して、全く同じ価値観、バックグラウンドの人であれば、同じ答えを言う確率も高く、議論の必要もない。しかし、多様な価値観・多様な個が集まると、そうはいかなくなる。Aだ!Bだ!、いやいやB‘だ!、はたまたCだ!といろいろなことを言い出す。そのとき、主流派が仮にAを選ぶとき、BやCと言い出す人は、単なるわがままや、あるいは抵抗勢力、あるいは不満分子と捉えられかねない。

 そこで妙な教育プログラムが発動する。それは、会社として大事にしている(とされる)価値観の刷り込み教育だ。そうして、多様な価値観や個は排除(変わるか、辞めるか)されていく。

 多様性が保たれた組織は業績が良い!?多様性と企業業績には相関関係がある!?仮にそうだったとしても、じゃあ、そうなりましょう、って本当にできるのか?そこに本気になれるのか?よーく自問自答し続ける必要がある。そこにちゃんと向き合っておかないと、簡単にその営みを止めるか、否定するという状況に陥ってしまう。仮にそこまで良くない状況にならなかったとしても、一見すると前向きな取り組みである「共通の価値観を大事にしましょう、みんなで同じベクトルで努力していきましょう」という号令がかかり、結果として多様性はあっという間に組織から消されてしまうことになるので、要注意なのである。

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About

人的資本イノベーション研究所は、「日本の人的資本を世界最高水準へ」を掲げ、その実現に向けてコミットしています。人的資本経営の成功に向けた伴走、人的資本イノベーションに関する講演、書籍等の執筆を数々手掛ける岡本 努が代表を務めます。これからの時代にイノベーションを起こす人的資本マネジメントのことならお任せください。