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No.1 適材適所 悪魔の辞典風:人的資本版  

あたらしく連載を始めたいと思います。それは、悪魔の辞典風に、人的資本マネジメントの本質にせまってみるというものです。

悪魔の辞典風とは?

 人材マネジメントは、こうあるべきだ。人事制度はこうなければならない。Well-beingだ、Job型だ、DE&Iだ、多様性だ、コンピテンシーだ、MBOだ、1on1だ、コーチングだ…、といったトレンドとなっているキーワードを聞くことも少なくない。我々は普段、それはきっと良いものなんだろう、と思い込んでいるところがある。そしてその前提の下、どうすればそれが実現できるか、変革できるかという議論にせっせと励んでいる。しかし考えてみたことはあるだろうか。それにどのような意味があるか、それを実現するとどのような良いことがあるのか、と。人事制度は本当に必要ですか?評価に差を設けることは本当に必要ですか?給与に差を設けると人はやる気になりますか?

 

 個人的に好きなアプローチがある。それは、風刺や皮肉で、様々なことの本質に迫る方法だ。そこで、この連載では、「悪魔の辞典風:人的資本版」として、組織・人材マネジメントの言葉、人的資本マネジメントで用いられる言葉を取り上げ、その本質や意味に迫っていく。

No.1 適材適所

・実は100%の実現は避けた方がよいもの。

・実現したとたん、組織も人も成長が止まるもの。

誰もが適材適所を実現すべきと考えており、最近ではAIツールなども、適材適所の実現を目指して開発されている。しかしながら、適材適所が実現できればできるほど、人は少しずつ成長しなくなっていく矛盾をはらんだもの。その瞬間で、適材適所率100%は目指してはならない。だいたい半分程度、もしくはそれ以下ぐらいで勝負できないと、組織も個人も強くなっていかない。

 

 会社や部門側が求める人材の要件(能力・知識・経験等)を踏まえて、その要件に合致する人材を選び、配置するのは、短期的な成果や生産性のためにはベストな選択となる。しかし、その人材にとっては、自身にとってのチャレンジ機会・成長機会とはならないことも多い。最悪の場合には、本人がその配置をまったく望んでいないケースもあり、その場合にはパフォーマンスさえ下がってしまうことになる。すなわち、この人材要件を踏まえて配置する人材は、その要件を満たしきっている人材ではなく、将来のキャリアや成長を考えた時の適切さを考えた時に、“良い感じで”不足があり、かつモチベーションを持つ人材をいかに選べるかにかかっていることになる。また、チーム編成もとても重要だ。このメンバーなら成果を出せるが、このチームだと成果が出せなくなってしまうといったことも少なくない。単純で、あまり考察されていない適材適所は、中長期的な観点からは、組織を弱くしてしまうのである。

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About

人的資本イノベーション研究所は、「日本の人的資本を世界最高水準へ」を掲げ、その実現に向けてコミットしています。人的資本経営の成功に向けた伴走、人的資本イノベーションに関する講演、書籍等の執筆を数々手掛ける岡本 努が代表を務めます。これからの時代にイノベーションを起こす人的資本マネジメントのことならお任せください。