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AIが絶賛した人事中計を経営会議に持ち込む前に

仮に、こんな会話があったらどうでしょう。「この人事中計は、どうやってつくったのですか」「AIでつくりました」「本当にこの計画でよいのですか」「分かりません。でも、AIはよいと言っています」。笑い話のようですが、自分で説明できない計画を持つ危うさは、AIによって見えにくくなることがあります。

文章が完成しても決まっていないことは残る

AIがまとめた案に「成長事業への人材シフト」「戦略人材の育成」「エンゲージメント向上」と並んでいたとします。どれも賛成しやすい言葉です。

ただ、経営会議で「どの事業から人を出すのか」「出した部門の業績はどうするのか」「採用できなかったら何を変えるのか」と聞かれたとき、答えられるでしょうか。文章を整える過程で、決めていないことまで決まったように見えてしまうのが怖いところです。

人事中計に必要なのは、自社として何を選び、何を引き受けるかという判断です。売上の拡大を優先して先に人へ投資するのか。利益を守るため、成長の速度を少し落とすのか。選択によって不利益を受ける部門には、どう説明するのか。きれいな言葉に整えても、この判断は残ります。

答えられない問いを先に見つける

刊行予定の『人事中計の作り方』(仮題)の実践編では、検討を進めるための77の質問を用意しています。ただし、77個の欄を全部埋めれば、よい人事中計ができるという話ではありません。

将来の事業に必要な役割を説明できるか。人材を確保するまでの期間を見込んでいるか。目標に届かないとき、どの条件を変えるか。こうした問いに答えようとしたとき、会社がまだ議論していないことが見つかります。

分からない箇所は、無理に埋めない。調べれば分かることと、経営が決めなければならないことを分け、調べる担当と、決める場を置く。人事中計の検討は、そこから具体的に進みます。

例えば、「3年後に事業責任者が5人足りない」という仮説に対して、候補者の経験を確認するのは情報収集です。いつ重要な仕事を任せ、現在の部門から動かすかは意思決定です。両者を混ぜてAIに答えを求めても、経営の宿題は片づきません。

AIには計画へ厳しく質問してもらう

私は、人事中計づくりでAIを積極的に活用したいと考えています。資料の整理、選択肢の比較、前提の矛盾の確認など、役立つ場面は多いからです。その際、案をつくってもらうだけでなく、案に質問してもらう使い方も勧めています。

例えば、経営会議前にこう頼みます。「この計画について、事業責任者が納得できない点を挙げてください。根拠のある事実、仮定、未決事項を分けてください。採用数が計画を下回った場合、どの目標が実現できなくなるかを指摘してください」。

その答えも、正しいと決めつけず、元の資料と照合します。特に、人員数の対象範囲や人件費の定義、集計時点が違えば、比較の出発点がずれます。不足情報を想像で補わせず、分からない箇所を明示させることが大切です。

実践編では、AIへ何を渡し、どこを人間が確かめ、誰と議論して計画へまとめるかまで扱っています。作業を速くできた分、自社の未来を選ぶ議論へ時間を使ってほしいのです。

経営会議で問われるのは、「なぜ、私たちはこの案を選んだのか」。そこを自分たちの言葉で語れる人事中計をつくりたいと思います。