未来は変わります。予測も外れます。だから計画は要らない、ではありません。変化する時代だからこそ、自分たちはどの方向へ進むのかを決め、簡単には手放さないことが必要です。
もくじ
Toggle精密な計画より、筋の通った意思
人事中計をつくろうとすると、「先のことは分からない」「事業計画がまだ固まっていない」という声が出ます。もっともです。5〜6年先の売上や人員を、一人単位まで正確に当てることはできません。
しかし、分からないことと、考えなくてよいことは違います。どの顧客にどんな価値を届けたいのか。そのために、どんな能力を会社の中に蓄積したいのか。どんな人が活躍し、どんな組織でありたいのか。これは予測というより、経営の意思です。
人事中計に必要なのは、未来を細部まで固定することではありません。前提を置き、仮説を示し、選んだ方向とその理由を明らかにすることです。
不確実だから計画できないのではなく、不確実だからこそ、どの変化を見ながら判断するかを決めておく。事業の前提、人材の需給、必要能力の変化を定期的に確かめる。これが、硬直的な計画と、意思のある計画の違いです。
短期成果に一喜一憂しない
人と組織の変化には時間がかかります。選抜育成を始めても、すぐに経営人材が完成するわけではない。管理職の役割を変えても、翌月から職場の空気が一変するわけではない。新しい人材を採用しても、その人が力を発揮できる組織になるまでには試行錯誤があります。
そこで、最初の反応が弱い、現場から不満が出た、短期の数字にまだ表れていない、という理由だけで方向を変えると、何も蓄積しません。もちろん、施策の進め方は柔軟に修正すべきです。しかし、「なぜこの未来を目指すのか」という大きな方針まで、簡単に手放してはいけない。
変えるべきは手段か、前提か、目指す方向そのものか。この三つを分けて議論することが大切です。
計画とは、対話を続けるための共通言語
完成した人事中計を棚に置いてはいけません。経営会議で、事業環境の変化と人材・組織の進捗を定期的に確かめる。現場の事実から学び、KPIを見直し、必要なら打ち手を変える。その一方で、選んだ未来への投資を続ける。
人事中計は、一度つくって終わる資料ではなく、経営と人事が未来について対話を続けるための共通言語です。
この共通言語があると、経営会議で人事が後から呼ばれる状態も変わります。事業戦略が固まってから採用と育成を考えるのではなく、どんな人と組織ならその戦略が成立するのかを、戦略づくりの段階から議論できるからです。人事が経営の後工程から、経営の当事者へ移ります。
正解を当てることより、考え抜いて方向を決めること。決めたら、現実を見ながら実行し、必要な修正を重ねること。そして、短期成果だけで投げ出さないこと。そこに、人事中計をつくる本当のおもしろさがあります。


