中期経営計画が3年だから、人事中計も3年。自然なようですが、人と組織を変える時間としては短すぎます。3年で見えるのは、すでに始まっていることの続きになりがちです。
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Toggle人と組織は、年度計画どおりには変わらない
新卒で採用した人が中核人材になる。次世代経営者の候補を見極め、複数の修羅場を経験させる。管理職の役割を変え、現場のマネジメントを変える。長く続いた組織文化を変える。いずれも、制度を発表した翌年度に完成する話ではありません。
3年という期間だけで考えると、どうしても「いま着手できて、3年以内に成果を説明しやすい施策」が中心になります。研修を何回実施したか、制度をいつ改定したか、システムを導入したか。実施状況は分かります。しかし、それによって将来の事業を支える人材と組織ができたかは、別の話です。
特に経営人材の育成は、研修だけでは進みません。異なる事業、赤字部門、海外や地域の拠点、新規事業など、本人の視野と判断を変える経験が要る。候補者を選び、配置し、経験を振り返り、次の役割へつなぐには、3年より長い時間軸が必要です。
5〜6年先なら、現在の制約を一度外せる
私は、まず5〜6年先の姿を描くことを勧めています。10年先では遠すぎて、きれいな未来像だけになりやすい。3年先では近すぎて、現在の人員、制度、予算、組織図に縛られやすい。5〜6年先は、現実との接点を保ちながら、いまの延長線を越えて考えられる距離です。
その時点で、会社は何で選ばれているのか。どの事業が伸び、どの仕事が減っているのか。どんな専門性とリーダーシップが競争力になるのか。社員はどのように集まり、育ち、動いているのか。ここを具体的に描きます。
そして、5〜6年先の姿から逆算し、「そこへ向かう最初の3年間に何を変えるか」を人事中計に落とします。5〜6年計画を細かくつくるのではありません。遠いゴールを見て、手前の3年を具体化するのです。
未来を決めると、いまの会話が変わる
未来像がなければ、採用人数の議論は「前年より何人増やすか」になります。未来像があれば、「5年後の事業構成に対して、どの人材群が不足するか」に変わります。育成の議論も、研修メニューの更新から、必要な経験を誰にどう積ませるかへ変わります。
要員計画も同じです。現在の組織図に人数を足し引きするだけではなく、将来減る仕事、増える仕事、人が担い続ける仕事を分ける。必要な能力の質まで考える。人数の表が、事業変革の設計に変わります。
未来は当たらないかもしれません。それでも、未来を置かずに現在の延長だけで決めるより、はるかに健全です。仮説が外れたら、前提を見直せばよい。ただし、四半期の数字や一時的な不評だけで、目指す方向まで毎回変えてはいけません。
人事中計は、未来を言い当てるための計画ではありません。未来に対して、会社としてどの方向へ進むのかを決めるための計画です。


