採用も重要。育成も重要。評価制度も、DE&Iも、エンゲージメントも重要。すべてを並べれば立派に見えますが、重要施策が15個あるなら、実際には何も選んでいない可能性があります。
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Toggle人事施策は、簡単に増える
人事には、やるべきことがたくさんあります。採用強化、選抜育成、キャリア自律、管理職改革、ジョブ型、タレントマネジメント、健康経営、組織開発、エンゲージメント向上。社内の要望を聞き、他社事例を調べ、世の中のトレンドを追えば、施策リストはすぐに充実します。
問題は、どの施策も単独ではもっともらしいことです。「これはやらなくてよい」と言い切るのは難しい。結果として、あれもこれも計画に入り、人事部の各担当がそれぞれの施策を進めます。計画は整っています。担当も決まっています。けれど、施策同士はつながっていません。
採用担当は採用人数、育成担当は受講者数、制度担当は改定日を追う。それぞれは真面目に仕事をしています。それでも、全体としてどの経営課題を動かしたのかが分からない。担当別の目標を足しても、会社の変化にはならないのです。
施策ではなく、変えたい経営の状態から考える
人事中計で先に決めるべきなのは、「何を実施するか」ではなく、「経営と組織のどの状態を変えるか」です。例えば、既存事業中心の会社が新規事業を次の柱にするなら、必要なのは採用施策だけではありません。
外部からどの専門人材を迎えるのか。社内の誰を越境させるのか。挑戦を評価する仕組みをどうつくるのか。失敗から学べるマネジメントにどう変えるのか。人件費をどこへ再配分するのか。採用、配置、育成、評価、報酬、カルチャーを一つの目的に向けて組み合わせる必要があります。
このとき、個々の施策の新しさは本質ではありません。大事なのは、施策の束が経営課題を動かす構造になっているかどうかです。
やらないことを決めて、初めて中計になる
人事中計は、人事部の全業務を載せる台帳ではありません。法令対応や毎年の定常業務は、当然きちんと行う。しかし、それをすべて「戦略」と呼ぶ必要はありません。
未来の姿を実現するために、今後3年間で特に変えることは何か。どこへ人と予算を厚く配分するのか。逆に、何は維持にとどめ、何をやめるのか。ここまで決めて、初めて優先順位が生まれます。
「やらない」と言うのが難しければ、「いまは最優先にしない」と決めてもよい。戦略とは、永遠に捨てることではなく、限られた時間と資源を、いま最も重要な変化へ集中させることです。優先順位が曖昧なままでは、現場に追加業務だけが降りていきます。
私は、人事中計を「人事施策のカタログ」にしたくありません。読んだ人が、なるほど、この会社はこの未来を選び、そのために人と組織をこう変えるのだ、と理解できるものにしたい。人事中計の価値は、施策の数ではなく、経営とのつながりの強さで決まります。


